賢治の世界

 賢治の世界は、宇宙とか、時空を超えるとか、永遠とか、そういう次元から、人間も含めた生きとし生けるものをみるというような、広大な世界を彼独特の言葉の力をもって表現しているところに迫真力を感じます。彼がこの世に夢に描いた共同体とでもいいましょうか、それを表したこの詩は、私も好きで、現代の不穏な世界に一つの答えを示唆していると思われてなりません。

      正しき(まさしきと読みます)願いに いさこうとも
      銀河のかなたに ともに笑い
      なべての悩みを たきぎと燃しつつ
      はえある世界を ともにつくらん

 かつて、現在では共生しているゴルフ場の建設反対運動をしていた頃、私は署名集めなどをしながら、「寂しさと悲傷を焚いて、人は透明な軌道を進む」という賢治の言葉をかみしめていました。反対を表明したということは、この「まさしき願いにいさこうとも」を地でいってたわけです。しかし、現在はピース・エコ・ショップをゴルフ場で毎日やらせていただくことで、平和を願う仲間という関係になったわけです。
 誰にも内在している魂の声に忠実に従う時、結果的には全ての悩みを解決してくれるエネルギーに変わり、その一つ一つのまたたきが世界を明るくしてくれると、私は賢治を生きてみて実感しています。