振り返って思うに、そもそも事がスムースに運んでいれば、この有機の里創り研究会は生まれていなかったでしょう。その意味で、事がスムースに運ばなくてもあきらめず、模索し続けた結果、この会が生まれるべくして生まれたことに感謝したいと思います。そしてその過程で会員の結びつきも、以前より一層緊密になったといううれしいおまけもつきました。
それではこの会の誕生までの流れを聴いてください。
 事の発端は、坂東市が平成二十一年六月広報誌で市民に呼びかけた「五つのプロジェクト」への参加から始まります。この呼びかけは、住民参加の町づくりを象徴していると高く評価し、私達の会では、プロジェクトの一つ、「農業創造プロジェクト」に四名が参加しました。もう一つ評価できたのは、市の職員も自主的に手を挙げて参加する仕組みだったことです。月に二回、夜七時半ごろから十時近くまで、みな仕事を終わった後の時間帯の話し合いが、半年間続きました。みな自主参加だけあって、出席率もよく、熱心で、職員も資料やこちらの提出物の準備など誠実に対応してくれました。
 そして、半年後沢山の提案の中から選ばれた案が、全体会で発表されました。その中に私達の会が提案した二案がありました。一つが、国が推奨しているバイオマスタウン構想に坂東市もトライしてはどうですかということ。もう一つは、市にある県立農業高校、農業大学校のどちらかに有機農業科を設けてほしいという事でした。
 最初の関門は、市議会でした。他の四つのプロジェクトから出された提案は、市議会で大なり小なり予算化され、実現しました。私達のプロジェクトの提案だけが全て没に終わりました。お金の問題以前に、提案の全てが基礎的な仕組みの改革そのものにつながっていたからです。
 二十年近く前、宮澤賢治的世界観に拠って、ゴルフ場建設反対運動から始まった私達の会は、全てが「だめでもともと」という行動の積み重ねで、ただし対立ではない対話の姿勢でこれまで一貫してやってきました。このゴルフ場との 最初の第一歩は、悲観的予測と事の大きさに、ものすごい勇気を必要としましたが、踏み切ってみたら、意外や意外すべてが好転していきました。この時の感銘が、その後の活動の原点になりました。私達の会の基本理念である「自由、平等、行動、非政治、非営利」の重要性もその時確信しました。その頃の会の歩みは、「宮澤賢治の世界にようこそ」という会のホームページに載っていますので、開けて頂けたらありがたいです。
 そして今、何か事を起こそうと思っていて、ちょっと立ち止まっている人がいたら、又それが、自分の魂の次元のことでしたら、絶対に踏み出すことをお勧めします。後で必ず良かったと思う時が来ます。私達の命の時間は限られています。もったいないです。
所で、市議会で没になった後、会では三通の要望書を提出しました。以下に載せますので、ご覧ください。




                         要望書

       坂東市長 吉原 英一殿

                        持続可能な資源循環型社会の構築に向けて一刻も早く踏み出して下さい

            
昨年、坂東市で住民参加型のプロジェクトの公募があり、参加する機会を与えて頂いたことに深く感謝いたします。又、その際、坂東市全体の将来や農業問題に深く関心のある市民や行政職員の方々と、胸襟を開いて語り合えたことは、今後も持続する良い関係が出来たと心強く思っております。そして、私達の会で提案した「次世代のための有機の里づくり」を、プロジェクトの方たちが沢山の提案の中から選んで下さったことに対して、「絵に描いた餅」に終わらせないようにしようと、責任と決意を感じている次第です。このような根本的、普遍的、包括的課題に取り組むことは、時間と様々な方面の人々の協力を必要としますが、それこそが将来に大きな有機的な実りをもたらしてくれ、自然と外から人も集まってくることにつながるのではないでしょうか。
 生ごみを焼却することは、反自然であり、長い将来にわたり土壌や地下水が、よくなることは絶対にありません。又、焼却することは、大気汚染や温暖化につながります。現代の大量生産、大量消費、大量廃棄の末路は、ごみを増やし環境を悪化させるだけです。そこで考え出されたのが、分別して再利用できるものはという方向になりましたが、それもコスト高だと、利益優先なので企業はなかなかやってくれません。これにより、資源が、ブツブツ寸断されて、何も生み出さないばかりか汚染源を生み出していきます。一刻も早くこの悪循環を断ち切り、根本的、公益的な解決をはからなければ、お金が無駄に使われるだけです。例えば、生ごみの焼却代を堆肥センターの建設費に回せば、何年間かで元はとれるのではないでしょうか。もちろんバイオマスタウン構想に応募して、国で認められ半分の助成を受けての話しですが。そして、もしこの堆肥センターが、本当に良い堆肥を生み出してくれれば、燃されて煙になってしまったかもしれないものが、土壌を改良する宝に変身することになります。
 私達の会では、NPO取得の時から、EM(有用微生物群)の普及による環境保全を会の二大柱の1つにかかげてきました。旧猿島町の時、町が茨城県で最初の「住民参加型の環境基本計画」作成の折、私達の会も関与し、提案させてもらい、平成八年から八年間、職員作成によるEM生ごみボカシを住民に無料配布し、住民による生ごみの減量化、堆肥化に努めてきました。その結果、環境センターでの可燃ごみの負担金が、他の市町村よりずっと低かったと聞きました。
 時代は刻々と変化し、その後「有機農業推進法」や「食品リサイクル法」などができ、国はバイオマスニッポンを最終目標に向かっている気がします。なぜならば、バイオマスタウン構想も、国に認められファイルされた時は、公表の義務があり公表により、他のまだバイオマスを実施していない市町村を啓発し、誘導し、国全体を資源循環型、環境保全型にしようとしている国の横断的な一大プロジェクトなのですから。
 現在、日本中で生命産業、基幹産業である農業が、高齢化、土地の劣化と疲弊、後継者不足など諸々の問題山積で衰退の一途をたどっています。しかし、食糧自給という大前提なくして国の存続はあり得ません。そして坂東市は現在もこれからも、農業が主産業で生きていくことになるでしょう。すると、これまでの化学肥料や農薬の多投による土壌や水の汚染、それらを生み出してきた今後は有限な化石燃料の高騰を予想した時、それに代わる土壌や水の質の回復、地域農業の活性化、堆肥や有機農法的な安全な食料生産ができる自治体になることこそが、先見性のある賢明な生き残る道ではないでしょうか。
 吉原市政になって「市民協働課」がつくられたことは、市政の中に住民の意思や協力や参加意識を汲み取ることこそが、これからの時代の要請であると高く評価致します。たとえば、バイオマスタウン構想を実現するためには、市が住民全体で共有できる未来図を先ず示して、住民の自主的協力をあおぐことがもっとも重要な最優先課題であると思います。それには、市、住民、企業、NPO、ボランティア団体、又市政のあらゆる課を有機的につないで、環境教育や広報による市の理念の周知や意識の啓発などを通して構築していくという点で、この「市民協働課」の果たす役割は大きいのではないでしょうか。
 私達の会も、次世代のために持続可能な良い環境を残すことこそ、さすが「平将門在りし里」と言われるよう、及ばずながら微力を尽くしたいと願っています。
 この要望に対して5月1 5日までにご回答下さい。


     平成22年4月16日

                                                NPO法人 猿島野の大地を考える会
                                                    代表 小野 賢二
                                                     会員一同



                                 要望書


        坂東市長 吉原 英一殿

                        坂東市の「バイオマスタウン構想」に
                   「次世代のため、元気、安心、希望を与える住民参加型、有機の里創り」
                           という基本理念を掲げて下さい


  バイオマスタウン構想は、国に認められた時は、公表の義務があります。反対にいう と、坂東市を外に向けて紹介する絶好の機会になります。
  現代は、特に昨今は元気、安心、希望の光がどこにも見つからず、日本のみならず世界中が混とんとした状況に陥っています。グローバリゼーションで瞬時に情報は世界を駆け巡り、全てが流動的、そこから、経済や将来に対する不安、うつ病や自殺、ホームレス、家族の崩壊など様々な病理現象が拡がっています。複雑で、問題山積の国際動向をかんがみ、地方都市の行く末を考えた時、現代のマイナス面を見据えて、坂東市独自の生き残る道を見つけて、着々と準備をしていかなければならないと考えます。地方主権が叫ばれる時代、他に先駆けて根本的な変革を外に向けて発信していくことが求められています。
 お金に象徴されるハード面だけや単発的な事象だけを追い求めても、その場限りで後につながらず余りにもったいないです。現代に最も欠けているのは、どんな時代にもどんな所でも通用する普遍的で、総合的、長期的ビジョンではないでしょうか。先ず基本理念ありきだと思います。
 そこで、坂東市の「バイオマスタウン構想」に「次世代のため、元気、安心、希望を与える住民参加型有機の里創り」という基本理念を掲げる事を提案します。「次世代のため」という目標は、人類の存続すらも危ぶまれている現代、命に対する愛情が込められていて、あらゆる年代層をも奮起させる力を備えていると思います。又、「有機」という言葉は、農業を始めとし、環境、教育、福祉などあらゆる分野を結び付け、拡げ、生きた関係を創造していくという包括的で根幹をなす重要な意味を持っています。この基本理念を大綱に定め、住民の中に浸透させ、本当に住民参加で、坂東市ある限り、時間をかけて具現化し、着実に積みあげ構築していけば、他に類を見ない、新しい時代の地方の先駆けとなることができるのではないでしょうか。住民が主人公で、次世代のため自分たちの知恵を結集して下さいという姿勢で市が臨み、市長がそれを束ね、官民の間に透明な信頼関係が醸成され、一体となって一つ一つの課題を克服していくならば、その過程で市全体rこ、元気、安心、希望という膨大なエネルギーが生じます。それこそが、現代に最も欠けていて、最も必須な人間の栄養素ではないでしょうか。又、その副産物として、縦割り行政の弊害も少なくなるのではないでしょうか。
 そしてそのエネルギーの放散は、自然と外に発信され、波及し、一発花火ではない持続性のある経済効果をも伴うのではないでしょうか。
 私は個人的に、宮沢賢治の「私という現象は仮定された有機交流電燈の一つの青い照明です」という人間定義に心底納得し救われ、真の元気、安心、希望の光を得、現在に至っています。市民一人一人が、有機交流電燈の青い照明としてまたたけば、坂東市は賢治言うところの「イーハトーヴ」(世界共通語であるエスペラント語で理想郷)に近づくことができます。
 それには、有機の里創りのプロセスに住民を参加させ、住民の声を吸い上げ、住民のやる気を掘り起こし、市民が社会と関わる自分の生活に密着した分野で、自分の力を発揮でき、自己実現の悦びを感じられるような機会を与え、官民一体となって遂行できるよう、常に基本理念を開示し、説明し、市民の協働を求める事が最優先と考えます。
 所で、「住民参加型」の好例として、平成八年度に旧猿島町が造った茨城県で最初の住民参加型という冠をつけた環境基本計画を紹介させて下さい。町はこの基本計画に基づいて、生ごみ用のEM(有用微生物群)ボカシを町の職員が作り、住民に無料配布することで、ごみの資源化、減量化を合併するまでの八年間続け、周辺の自治体の中で可燃ごみの負担金が一番少なかったことや、一人当たりのごみの搬出量が茨城県で一番少ない時があったとも聞きました。又、私たちの会が市との委託事業で、現在まで十年以上続いている水浄化対策としての「米のとぎ汁流さない運動」も住民参加型の一つです。
 この「バイオマスタウン構想」が生まれるきっかけになったのは、市が「五つのプロジェクト」を市民や市の職員に呼びかけたことから始まり、まさにこの基本理念と偶然合致した、基本理念の第一弾とも言えます。バイオマスタウン構想を、この基本理念に沿ってやるか、単発でやるかということは、市の運命にとって雲泥の差です。 基本理念の第一頁をバイオマスタウン構想で飾り、一歩一歩住民参加の歴史を作っていくことで、結果的に有機の里が出現してくるのではないでしょうか。初めから有機農業一辺倒をうたうのではなく、有機の里創りという言葉は、徐々に市民の納得を得ながら、又様々な立場の人たちの合意形成を得ながら推移し、拡がり、最終的には有機の里の大団円ができていくという広義の意味合いをもちますので、支持してもらえるのではないでしょうか。勿論、農業が主産業である坂東市にとって、農業こそが命運をかけた最も重要な課題です。それだからこそ、どう向き合うかを考え、出来るだけ早く覚悟、立場を決めておかなければなりません。遠くない将来、石油に依存できない時代がやってきます。石油を大量に消費して作る化学肥料や農薬は高騰し、同時に土地は段々硬く無機質になっていき、農薬耐性により病気は蔓延し、希望の持てる事は何一つ待っていません。それを予測し、今から堆肥や微生物で、持続可能な生きた大地をつくる努力をしていかなければ手遅れになります。私たち「猿島野の大地を考える会」は、NPO(非営利活動法人)として、ユニセフエコショップ事業による命の支援とEM普及による環境の保全を二つの柱に、その二つを循環させることで、世界平和に少しでも関与できることを悦びとして、会員や皆で協力し合いながらこれまで歩んできました。昨年市で呼びかけたプロジェクトの一つ「農業創造プロジェクト」に参加させてもらい、「バイオマスタウン構想」を提案し、受理され、坂東広報紙に載せて頂いたことで、本気が生じ、それ以後「大地を考える会」という名に恥じないよう、有志達で二つのテーマに絞って学習を続けてきました。一つは坂東市にふさわしいバイオマスタウン構想の内容について。もう一つは、連作障害を克服でき、安全な農作物を作るのに不可欠な或る微生物の培養増殖についてです。
 バイオマスタウン構想の基本理念に戻りますが、この理念の範躊に入る事例は、これまでにも旧岩井市、旧猿島町、現坂東市にあると思いますので、多いに洗い出して構想の肉づけに活用して下さい。
 又、構想の中身で、堆肥センターにするかバイオガスプラントにするかですが、これから地球温暖化抑制の時代、電気、熱、堆肥と副産物が多く、費用対効果や原価償却を促進する意味でもバイオガスプラントの方がよいかもしれません。
 そして、バイオマスタウン構想に賛同してくれた「農業創造プロジェクト」の市民や職員のメンバーを始め、生ごみは主に生活環境を携わる女性の分野なので、現在ある女性団体協議会の方達、又良質な堆肥を作るために有機農業に関心のある農業者の人達などに働きかけ、やる気のある市民に協力をお願いし、生ごみの円滑な分別収集の方法や無駄のない効率的な施設の実現にむけて活発に協議して頂きたいと願う次第です。
 もう一つの大地の回復についてですが、私たちが現在実験段階である或る微生物の有用性が市との協働で検証できれば、私たちの会は非営利活動法人で、坂東市を基本理念に沿った名実共に本物の市にしたいという思いだけで活動しているので、農協や他の民間企業とも連携し、共生していく所存です。一例をあげると、茨城県旧八郷町(現在筑西市)は、かつて「たまごの会」という一有機農業者が他から移住してきて、それがきっかけで次第に有機農業者が増え、有機の郷として有名になり、農協ともうまく共存していると聞き及びます。
 坂東市においてもそういうイメージが定着し、その関係性等にも関心がもたれ、自然と人が坂東市を訪れるようになり、その時真に有機の里として市民が一体となって着々とがんばっていれば、更に事態はおのずと好転するようになるでしょう。それには今、種を蒔いておかねばなりません。一刻も早く、基本理念に基づいた「バイオマスタウン構想」の着手に踏み出して下さい。正真正銘、有機の里が実現した暁には、名市長として後世に残り語り継がれ、継承されていくことは間違いないと確信しております。
 最後に、今年ノーベル賞受章者の一人の方の「基本的に正しければ、努力し継続していれば、必ず夢は実現する」という言葉で終りと致します。
 上記の要望に対しご理解をいただき、できるだけ早くお返事をお待ちしております。

              平成22年10月20日
        
                                      NPO法人
                                        猿島野の大地を考える会
                                         代表 小野 賢二 
                                        会内 ゴミ関心部会、四季の会
                                          代表 小野 羊子




                                   要望書


      坂東市長   吉原 英一殿

                          バイオマスタウン構想に基本理念と市長の英断を  

 先日は、お忙しい中をお会い下さり、ありがとうございました。
会員の方達が、市長さんと面識を得られたこと、これから必ずや何かにつながっていくと信じます。また、市長さんにも、私達の市を思う熱意をお解り頂けたことと思います。
 あの時、市長さんが今後生ごみに関するモデル地区を決めてやっていくお積りだと言われました。その際お話を聞いた会員の一人が先日、同封しました新聞の切り抜きを持ってまいりました。
 私はそれを読んで、牛久市バイオマスタウン構想をもうすでに申請,公表していたはずだと思い出し調べましたら、やはり平成20年3月に茨城県で最初にそれを申請、公表しておりました。その新聞では、ようやく23年3月から約一年間モデル地区を設けて実施とあります。即ち、公表後三年目にしてモデル地区開始で、最終的な事業化は五年以内というわけです。
 そこで、坂東市も最初にやるべきことは、先ず構想書の着手ではないでしょうか。同封しました牛久市の構想書を読んで頂けばおわかりのように、あくまで構想書は構想書であって、それに基づいて数年の歳月をかけて施策を着実に実施していくことが重要なのではないでしょうか。牛久市は、最終的に堆肥化するか、バイオガス化するかは検討中とあり、決定はしていません。
 構想書の役割は、市が将来どんな市を目指しているか、それにはあらゆる課を総動員して、それに向かって一つになれるような基本理念をかかげ、アウトライン的にその実施内容を示すことに尽きると思います。
 牛久市は現在、構想書そのものは、なぜか市のホームページ上にはのっておりません。その代わり構想書を申請する前後から現在までの流れを、「牛久市地域エネルギービジョン」というタイトルで、地球、市への熱い思いと実践力をもって発信しています。その流れを読みますと、牛久市は先ず市自らバイオマスタウン構想策定を決めた後、市のホームページ上でバイオマスタウン構想とはどういうものかをわかりやすく市民に説明したうえで、市民の意見を求めました。
 そこで坂東市も、先ず構想策定を決めたうえで、市民の意見を求めて下さい。
以前、市長さんが女性団体協議会の集まりの席上生ごみの堆肥化についてお話しになり、みなさんが関心を示したとお聞きしました。坂東広報誌、市のホームページ、回覧などで、市民にわかりやすく伝え、市民の意見を求めて下さい。
 私達の会や女性団体協議会の方達が、それを受けて意見を出します。まだ他にも関心のある市民がおられると推察します。そのプロセスを大事に、構想書を作成して下さい。それこそが住民参加、市民協働の姿ではないでしょうか。
市が構想書を出した後、市の方向性に関心をもって意見を出してくれた団体や個人を核に、実現にもっていくことが賢明な早道であろうと思います。
 市長さんは、市の財政が厳しいと言われましたが、可燃ごみに占める毎年の生ごみの焼却代を考えたとき、堆肥やバイオガスに変換しリサイクルすればいつかは原価償却、費用対効果が出ると思われます。生ごみを燃やすのではなく、3Rの原理であるリサイクル(再循環する)、リユース(再使用する)、リデユ―ス(減らす)に則って市が動くことは、「入るを量りて出ずるを制す」という昔からの日本人の簡素、節約の精神を貫いていくことではないでしょうか。
 そしてそれは、私が坂東市バイオマスタウン構想に基本理念を掲げて下さいと要望した、坂東市の最終目標「有機の里」にも近づけることになり、将来の坂東市の農業振興にも大いに貢献してくれることと確信致します。
 私達の会は、宮澤賢治の世界観に則って、ゴルフ場建設反対から出発しましたが、単なる反対ではなく対話を通して、相手の可変性を信じやってまいりました。有難いことに、現在は会の中心事業の一つである、世界平和を願う「ユニセフエコショップ事業」のよき理解者であり、協力者であり、共生関係にあります。
そして私達の会は、「自由、平等、行動、非政治、非営利」を基本理念とし、会員の自主的な相互扶助の精神でここまで歩んできました。これからも是々非々の大局的な立場で、この坂東市から清新な風を世界に向けて発信していく所存です。
 この要望書を上記のようにしたためた数日後に、牛久市バイオマスタウン構想作成を担当した課、環境衛生課にお電話してみました。現在は、環境政策課になっていました。この名前の変化と七十頁近くに及ぶ「牛久市地域エネルギービジョン」の中に、牛久市が二年間の間に環境に対する真剣さを強めていったことがうかがえました。そして親切に対応してくれた中で、構想書が、市と市にあるNPOが協働で作成したものであると知りました。土浦市も、民間企業との連携でバイオマスタウン構想策定が行われたと聞きました。
 坂東市でこのバイオマスタウン構想が提起されたのは、そもそも市長さんが住民参加のプロジェクトを呼びかけたことから端を発しています。そしてそのプロジェクトの中で、私達の会がバイオマスタウン構想推進を提案し受け入れられ、市の広報誌で公表されたというプロセスも踏んでいます。構想書作成の段階から、住民の側としての私達の会が関わっていくことが、より望ましいと思われます。
 市長さんの英断を、心よりお待ちしています。


          平成22年12月21日

                                             NPO法人
                                               猿島野の大地を考える会
                                                  代表 小野 賢二
                                                会内、ゴミ関心部会、四季の会                                                           代表 小野 羊子 



この三通の要望書を読んお分かりのようにで、一定の時間的間隔を置いて出しています。それまでに出した要望書では必ずお返事を頂けたので。待っていたのです。でも結局は頂けませんでした。
 数年前になりますが、岩井市猿島町が合併して、坂東市になってからのことですが、平将門に纏わる将門館ができるとのことから、会では独自にその建設反対の署名活動をしたことがあり、結局二団体の署名提出で、市では建設中止を表明しました。そのような過去のいきさつもあり、平成二十三年に入って、市民の人たちに私たちの会の真意を知ってもらう意味でも、署名活動をしようという気運が高まり、行動に推移しました。
 その時の署名集めの用紙です。ご覧ください。


                               バイオマスタウン構想」実現に向けての署名


 皆さんは、バイオマスという言葉の意味をご存じでしょうか。生ごみ、畜産の廃棄物、もみ殻、落ち葉、木材のチップ、し尿などなど。これらの有機物を総称してバイオマスといいます。バイオマスというのは、生物体量という意味で、微生物、動物、植物がいろいろ形を変えた総量です。現在、それらは各々の地域で、燃されたり、廃棄されたり、活用されないままになっているもったいない資源です。特に生ごみは、現在多額の焼却費を払って燃され、環境汚染や温暖化につながり、悪循環を引き起こしています。
 国では、数年前から「バイオマス日本」というキャッチフレーズで、一府六省横断的に、各々の地域がバイオマスを堆肥化したり、熱、電気、液肥がとれるバイオガス化したりすることで、資源循環することを、公表の義務と半分の助成金をつけて奨励しています。それを「バイオマスタウン構想」といいます。
私達、NPO法人猿島野の大地を考える会」では、平成21年に坂東市が市民参加を呼びかけたプロジェクトの一つ、「農業創造プロジェクト」に4名の会員が入り、半年間月二回熱心に話し合いが行われました。最終的に、私達の会が提案した、バイオマスタウン構想作成と、坂東市にある農業大学校有機農業課設置案が受け入れられ、坂東広報誌、1月号に掲載されました。他のプロジェクトの提案は、予算も付いて実施されましたが、この案は大きい事柄だけにそのままになりました。せめてバイオマスタウン構想だけは、日々お金と環境の悪化がともないますので、早急に考えてほしいとこれまでに会で三通の要望書を市長に提出しました。下に提出年月日と要望書の題名を記します。

1.平成22年4月16日 持続可能な資源循環型社会の構築に向けて、一刻も早く踏み出して下さい
2.平成22年10月20日 坂東市バイオマスタウン構想に「次世代のため、元気、安心、希望を与える住民参加型、
有機の里創り」という基本理念を掲げて下さい
3.平成22年12月21日 バイオマスタウン構想に基本理念と市長の英断を

 参考までに、「有機」とは「生命」を意味し、微生物から植物、植物から動物、動物から廃棄物、廃棄物から微生物という限りなき循環を指し、持続的で安全な農作物の生産を意味します。同時に人間同士の血の通った温かいつながりも意味します。坂東市が、次世代のためにグローバルな視点に立って、足元から実践していく生活者がつながりあえる市であることを願いつつ。

 農業が主産業である坂東市から、バイオマスタウン構想発信を契機として、老若男女、みんなで力を合わせて坂東市有機の里にしていきましょう。
「基本的に正しければ、努力することによって、夢はいつか実現する」これは、昨年のノーベル賞授賞者、根岸さんの言葉です。彼はこのたび、地球温暖化や食糧、エネルギー問題を解決するため、「人工光合成」の研究に着手しました。私達の会も偶然ですが、EM菌(有用微生物群)の主役でもある光合成細菌の培養に取り組んでいます。私達住民一人一人が、後に続く子供たちを思い、少しでもいい環境を残すため、日本人の昔からの知恵、もったいない精神を発揮して、自発的に行動することでつながりあっていきましょう。
 上記の趣旨にご賛同頂ければ、ご署名お願い致します。


          平成23年1月1日

                                          NPO法人 猿島野の大地を考える会
                                 茨城県坂東市菅谷2218 TEL-FAX 0280(88)7670




 地元の会員は、この署名集めもしながら、仕事のかたわら、会の一月恒例の炭焼きアンド餅つき交流行事のお知らせや準備そして本番と、毎年のことなのであわただしくも各々が自然と役割分担し、充実して過ぎていきました。そして、二月は市の文化祭。会ではもう十年以上、活動展示をしてきているので、その作成準備に追われましたが、それも毎年のことながら、どうやら乗り越えました。そして三月、悪夢のような一日があり、この日を境に日本中の運命が変わりました。署名集めも、この異常な大事の前には、小さなことですが続けられ、五月には千名を優に超えましたので、十名ほどの会員で市長室に赴き、署名を手渡してきました。下に載せてある書面を添えて。                                     

   



  茨城県坂東市                 
         市長 吉原英一 殿                                    平成23年5月20日
                                                         
                                                 NPO法人
                                                    猿島野の大地を考える会


 私達の会で、「バイオマスタウン構想」実現について、市民の声を集めました署名用紙を提出するにあたって、一言述べさせて頂きます。
 私達の会は、坂東市が住民に呼びかけたプロジェクトの一つ「農業創造プロジェクト」に参加したお蔭で、今後の農業の在り方を考えるきっかけを与えられました。そして、現在廃棄物化している未利用の、もったいない資源にもなるバイオマス(生物体量)をうまく循環させることができる「バイオマスタウン」の実現を国が勧めている「バイオマスタウン構想」の存在を知りました。しかし、これまでに三百以上の自治体が、構想は国で受理されたものの、現実の成功例は少ないと聞き及びました。
 化学肥料の多用による土壌の無機化、農薬による耐性菌の増加、両者の地下水への浸透、連作障害などなどの問題に加えて、今回の震災による放射能汚染が、農業の未来を更に暗くしました。
 私達の会は、この厳しい現実を見据え、身を引き締めて、次世代のために、新たな時代を創っていこうという決意で、この坂東市を「微生物循環によるバイオマスタウン」にしようと、部会「有機の里創り研究会」を発足させました。幸い、私達の会で取り組んでいる微生物は、放射能汚染を減少させる可能性を秘めています。そしてバランスのとれた微生物の組み合わせにより、持続的で豊かな土壌が約束されれば、それに勝る次世代への贈り物はありません。
 「有機の里創り研究会」は、「猿島野の大地を考える会」の基本理念に基づいて、「バイオマスタウン構想」と並行して「微生物循環によるバイオマスタウン」の実現に向けて、行政と連携して、実験、検証を踏まえながら、一歩一歩着実に進めていくことを希望しています。
 以下に、私達の会「猿島野の大地を考える会」をご理解頂くために、会の定款並びに基本理念を載せます。

定款
 地球的規模の環境悪化や世界で勃発している地域紛争等の現状に危機感を抱き、宮澤賢治的世界観に立ち、ユニセフエコショップ事業やEM普及活動という具体的展開を通して、このような世界的規模の問題に対しても、自分の足元から根本的に解決する路があることを社会に示し、平和的な輪を広げていくことを趣旨とする。

基本理念
   自由   会の定款に沿って、各々個性の優れる方向に自由に手を挙げて役割分担をする
   平等   一人一人が魂の保持者であるという点で尊重し合う
   行動   行動することで、一人一人が真の元気、安心を得られ、行動の結集が希望を実現に近づける
   非政治  全てはその時その時、是々非々で判断する
   非営利  会の定款にある通り、世界平和や社会正義に寄与する

 上記の会の部会として、このたび「有機の里創り研究会」が発足しました。発足の動機は、坂東市が「バイオマスタウン構想」作成の暁には、長期目標として掲げてほしいと私達の会が要望している基本理念「次世代のため、元気、安心、希望を与える住民参加型の有機の里創り」を、猿島野の大地を考える会の基本理念に則って、具体的に円滑に実現するためです。
 そして、「有機」とは「生命」を意味し、微生物から植物、植物から動物、動物から廃棄物、廃棄物から微生物という限りなき循環を指します。又、同時に人間同士の血の通った温かいつながりも意味します。即ち、有機の里とは全ての生命がつながり、重なり、拡がり、組み合わさり、組み立てられた、宮澤賢治言うところのイーハトーブ、理想郷を意味します。
 今回の東日本大震災で、日本のみならず世界中で、人類のこれまでの文明の在り様に猛反省を迫られる事態に遭遇しました。地震津波原発事故という連鎖的天災、人災の極限状況は、世界全体が人類存続の危機を感じると同時に、その真只中に置かれている被災地の人たちがいつ終わるともしれない不安と恐怖の中にあっても辛抱強く節度、知恵、潔さをもって支え合いながら生きている姿勢や、日本中、世界中から温かい支援の輪が自然と湧き広がっていることに、私達が目指す有機の里の原点を見る思いがします。

                有機の里創り研究会の活動方針

一、 バイオマスタウン構想の実現を、老若男女あらゆる世代の自主的な住民参加で、微生物による良質な堆肥化をローコストで
          簡素に実現すること。
二、 次世代に持続可能で安全な大地を残すために、「民農官学」という坂東市独自の新ししい有機的な関係を構築し、微生物による
          エコ(エコロジカルでエコナミカルな)農法を確立すること。
三、 上記の活動を様々な方法で外へ発信し、農家民宿制度や耕作放棄地活用制度などを作り、坂東市での新規就農者の育成や
           定着をはかること。
四、 坂東市にある農業大学校有機農業科をもうけること。



 私たち会の人たちが忙しい中で集めた千名を超える貴重な署名に対する市長さんのお返事は、どんな形にせよ結局頂けませんでした。それでも「雨にも負けず、風にも負けず・・・」の賢治魂で、明るい未来、人の可変性を信じて、前へ前へ。どんな人ともつながりあえることを信じて。