自立定着村

 ペシャワール会、検索していただけましたか。私同様驚かれたのでは。
 ペシャワール会が現在まで至るには、長い道程があって、その一貫性を私たちの会も及ばずながら見習いたいものです。何事であっても、そこに持続性があるかどうかが、正しさの規範ではないでしょうか。
 命の持続性、生活の持続性こそが平和の証と、水、食料のためには井戸掘り、用水路建設が必要と、土木工学という医師には全く無縁の世界に踏み込む勇気は、現地で命を懸け、現地の人々と苦楽を共にしてきたからこそ湧き上がるものと思います。
 そして、井戸掘り、用水路建設の工法に中村医師が選んだのは、昔からあるアフガンや日本の江戸時代の知恵でした。彼は、九州にまだ現存していた江戸時代の用水路の堰に何度も足を運び、それをとりいれました。また用水路の側壁は、江戸時代は竹のじゃかごが使われたそうですが、アフガンには竹はないので、ワイヤーでじゃかごをあみ、その中に岩石の多いアフガンでは困りものの石をいれ、それを並べて造っていったそうです。そして両岸に柳を植え、その柳が根を張り成長するころには、じゃかごが古くなり、その根が側壁の補強の役目もするという寸法です。
 クナール河という大河から水をひいて、約七年の歳月をかけて、三千町歩を緑の大地にかえていった過程で、水の少ないアフガンでは、ゲリラ豪雨のような時に降る水ももったいないし、周囲への被害も少なくすむと気が付き、それを溜めておく用水池もつくった事を知り、私はそこにも知恵の力を感じました。知恵とは、自然を破壊せず、自然の恵みに感謝し、持続性のあるプラスの方向に持っていくことだと思います。
 又、戦争の火種は、これまでの歴史を振り返っても、よく宗教の違いから起きることがあります。イスラエルパレスチナでは、もう何代にもわたって憎しみの連鎖が続いており、悲しいことです。
中村医師は、熱心なキリスト教徒であり、アフガニスタンは熱心なイスラム教徒が占める国ですが、そこには宗教の違いからくる対立はなにもありません。宗教の違いを超えた人類愛ともいえる、大同小異のたましいでつながりあっている信頼関係ではないでしょうか。
 
 ペシャワール会は、用水路完成後、今度は用水路が永く役立つように、維持補修していく人たちが住む自立定着村を、それもきびしい砂漠の中に創ることを決意し、決行し、現在もうそれはほとんど実現しつつあります。