デフレ

 私たちの会が支援に力を入れているアフガニスタンペシャワール会では、ある時期から医療活動と並んで、命の源である水と食料の自給自足こそが最優先課題だと、代表の中村哲医師自ら陣頭指揮、重機を動かし、難民の人たちとこれまでに千本以上の井戸を掘り、用水路を拓き三千町歩以上の不毛の大地を緑にしてきました。
 戦争の真っただ中、地球温暖化で砂漠化してしまった農地では難民になるしかなくなかった農民が、これによって雇用が生まれ、数年間土木作業に従事するうち彼らは立派な職人に成長し、農地も回復しました。この人たちの日当が二百四十円で、家族全員が食べていけるのだそうです。その点、私たちは支援のし甲斐はありますが。
 日本の終戦後どさくさの頃、日雇い労務者を「ニコヨン」と呼んでいたのを憶えています。それは、日当の「240円」をそのように呼んでいたのだそうです。なんと、六十五年以上前の日本の物価と今のアフガニスタンの物価が同じという意味にもなりますね。
 今、日本ではデフレが長い間続き、景気が低迷していると言われています。それでもアフガニスタンと比べれば、日当は平均で二十数倍の額、物価もそれに連動するわけなので、生活の大変さは同じかもしれません。ただこれからTPPで、関税撤廃で輸出入が行われるとなると、農産物などの輸入価格は、国の物価の違いがストレートに出てくるので、その点では世界の物価に近づいているデフレのままの方が少しはましな気もするのですが。
 どちらにしても、会員の一人が「行くも地獄、帰るも地獄」と言いましたが、正に日本は今岐路に立っているのは事実で、それ以外の生き残りの道を考えなくてはなりません。
 今こそ、リサイクル(再循環)、リユース(再使用)、リデユース(ゴミを減らす)の3Rも,生き残りの知恵の一つだと思うのですが。